A 人生の余り道    
人生の余り道  (時の足跡)

エージェント・ライアン

スタッフ

監督 : ケネス・ブラナー   原作: トム・クランシー 

主演 : クリス・パイン     助演 : キーラ・ナイトレイ/ケヴィン・コスナー/ケネス・ブラナー


あらすじ

エージェント・ライアン

ジャック・ライアンはロンドンに留学中に9.11テロの映像を見て憤りを感じて海兵隊に入隊した。アフガニスタンでヘリが攻撃されて負傷して退役したが、CIAのハーパーにスカウトされ、ウォール街の投資銀行に就職してCIA情報分析官として密かに不審な資金の流れを探っていた。約10年を経たある日モスクワの投資会社の不穏な動きに気付いたライアンは、現地での調査に赴く。


投資会社チェレヴィン・グループを訪れた直後、ホテルで謎のボディガードの襲撃を受け辛くも危機を脱するが、そこでライアンはハーパーから分析官ではなくエージェントとして事態を探れと告げられる。心配のあまりジャックを追ってモスクワに来た恋人の協力を得てチェレヴィン事務所のコンピューター室の鍵を手に入れて、厳重な警戒の下にある投資会社に侵入して株の大暴落を仕組む重要情報を窃取した。


またジャックは、チェレヴィンが経済テロに合わせて爆破テロを実行して全世界を一挙に第二の世界恐慌に陥れてロシアによる世界制覇を企んでいることを知る。ここでジャックは頭脳明晰ぶりがいかんなく発揮して次々と難題を説いて、同時テロの時期・場所を突き止めてゆく。


映画の題名に惑わされて

前もって十分に調べもせずに時間が空いたので急に見に行った。ポスターなどを見た時点では「〜ライアン」という表題、ポスターに映った主役の遠景などからてっきりマッド・デイモンが主演している映画だと思い込んでいた。「ライアン」という表現が目に飛び込めば、以前に見たマッド・デイモン主演の「プライベート・ライアン」の記憶が生々しいのでついそのように思ってしまう。(私だけかな?)


本作品では、「スタートレック」に主演したクリス・パインがジャック・ライアン役を演じているが、所謂イケメンで線の細い印象を受けるので同時テロを阻止する役割としてはやや役不足かと感じた。しかし、内容的には経済テロをメインにしているので派手なアクションが少なく、頭脳で勝負する役どころなので適役とみられたのだろう。ところが、画面では分析官としての頭脳戦や心理的駆け引きのシーンがほとんど見られなかったのは残念だった。


原作者:トム・クランシ―について

トム・クランシ―を一躍有名にしたのが「レッド・オクトーバーを追え」(1984年:映画化は1990年)であった。世はまだ東西冷戦の最中。ソ連の最新鋭の原子力潜水艦を、ソ連に悟られずに入手するストーリーで、主演のショーン・コネリーのファンでもあったのでその活躍がとても印象に残っている。この中でジャック・ライアンはCIAの分析官として登場しているが、当時はこれがシリーズとして映画化されるとは思っていなかったのであまり印象に残っていない。その後ジャック・ライアンシリーズとしてハリソン・フォード主演で「パトリオット・ゲーム」と「今、そこにある危機」が、「アルゴ」で監督・主演したベン・アフレックで「トータル・フィアーズ」がつくられている。


原作者のトム・クランシーは昨年(2013年10月)66歳で急死したが、本作品でジャック・ライアンがCIAにリクルートされている場面が描かれていることから、若返ったジャック・ライアンがシリーズ化されて、今後も映画の中で活躍を続けることになるのだろう。


CIAによるリクルート

ジャック・ライアンが大学時代に書いたレポートを読んだCIAのハーパーが、アフガニスタンで負傷して退役したジャックをCIAに誘った。ジャックがなぜハーパーの誘いを受け入れたのか細かいところは描かれていないが、現実的なCIAのリクルートのひとつのやり方が描かれていると思った。


ジャックはウォール街の投資銀行に就職し、CIA情報分析官として密かに不審な資金の流れを探っていたところ、およそ10年後にモスクワの投資会社の不穏な動きをつかんだ。映画ではその10年間のライアンの仕事ぶりは省かれているが、仮にこれが15年後であっても20年後であっても、あるいは遂に不審事案が発生することがなくても同じように勤務していくことになる。そして大多数の情報分析官は、生涯を通じて不穏な情報に接することなくCIA員としての勤務を終えてゆく。実際にそうしたCIAの分析官が世界中の至る所に埋め込まれているのだろう。


脚本がやや雑

CIAの情報分析官とエージェントでは任務が異なる。情報分析の任にあった人間がある日突然にエージェントとしての活動ができるのだろうか、疑問に思う。「ゼロ・ダーク・サーティ」の女性分析官マヤがオサマ・ビン・ラディンの居場所を割り出したような役割を果たすのが分析官だと思う。ジャックの役割設定が不自然だった。


モスクワに着いて投資会社チェレヴィン・グループを訪れた直後、ジャックはホテルで謎のボディガードの襲撃を受けたが、なぜジャックが敵地のモスクワで身元不明のボディガードを雇ったのか映画では何の説明もないのでわからない。しかもそのボディガードはウガンダ人、なぜ筋骨隆々で派手で目立つようなウガンダ人をボディガードにしたのか理解できない。


経済テロと爆破テロを同時に実行することで第二の世界恐慌を引き起こそうと企てたにしては、なぜチェレヴィンは息子のみに重要な犯行を単独で実行させたのか。成功するのに必要な複数犯で実行するのが自然だと思う。また、なぜチェレヴィンの息子は人を躊躇なく殺してまで、アメリカに対してテロを仕掛けるのか、その動機が描かれていない。


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