人生の余り道  (吹矢を楽しむ)

「素吹き」の重要性


支部の練習で「吹き方が分からなくて矢がバラバラになる」との質問を受ける。説明するが理解してもらえることが少ない。私自身が"方法"を正しく表現できていない面もあり、聞く側も私の意図を正確に理解できていないからなのだろう。


実際の動作を見てもらうことなく言葉で説明することの難しさを承知してはいるが、ここでは敢えて文章で説明してみたい。


◆短く一気に息を吐き出すこと
 
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強い矢(A)と弱い矢(B)を吹いた時、的の位置では空気抵抗の影響でBの方が落差が大きくなる。Aは比較的真っすぐ飛ぶので(B)の方が落差が小さくほぼ狙った場所に中る。


的中率を高めるためにはできるだけ強い矢を放った方がよい。ただし、強く吹くほど胸が揺れ、身体⇒腕⇒筒が揺れるので矢がバラつく原因になってしまう。したがって、筒が揺れない程度の吹き方、力でなければならない。


矢は筒の中に在る間だけ吐き出す息によって推進力を得る。

計算を簡単にするため矢速を時速120Kmとすると()、筒の長さは120cmなので

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120p÷120Km/H

=120cm÷(120×1000×100cm÷3600秒)

=0.036秒≒0.04秒


矢は0.04秒で筒を飛び出してしまうので、その後の吹く力は矢に伝わらない。左図の緑色の部分の力は矢を飛ばす力にはなっていない。したがって強い矢を飛ばすためには0.04秒以内に一気に吹く必要がある。


注 : 吹矢協会は創設間もない頃に全国大会の種目「スピード競技」で"矢速"の競技を実施しており、2002年度大会の男子優勝者の記録は188Km/Hであり、女子優勝者のそれは143Km/Hであった。


◆同じ強さの矢を吹くこと

矢がバラバラにならないためには、常に同じ力で吹くことが必須である。往々にして「吹矢」という名称から、"吹く"ことばかりにとらわれて吸うという前提を忘れがちになる。弓道や射撃と異なり吹矢では吸うことの良し悪しが命中率に決定的に影響する。


同じ力で吹いたつもりでも、吸い込んだ息の量が7分目の場合と9分目の場合では飛び出す矢の速さは大きく異なる。矢が大きくバラける原因は吸い込む息の量が一定でないことが多いと考えている。


吹矢では1本に付き2回深呼吸をする。基本動作3で筒を上げる際には胸式呼吸で胸いっぱいに吸い込む。基本動作5では腹式呼吸で腹に溜め込むような気持で臍下の「丹田」辺りに吸い込む。そして一瞬息を止め、的に向かって「短く一気に」吐き出す。


私の場合は、奥歯を噛み締めることなく息を吸うとどこまでも吸えるような状況になるので、奥歯を軽く噛み合わせてそれ以上吸い込めなくなる感覚を練習でつかむようにしている。

定量であることの識別法は、各自が自分に合った方法を作り出さなければならない。


◆「素吹き」による練習

元巨人軍の松井秀喜選手は、宿舎の畳が擦り切れるまで素振りの練習をしたと聞く。ホームランを打とうとするならば、何度も何度も素振りをすることで関連する筋肉を鍛えて早く振るための体づくりをすることが極めて重要だった。


吹矢では「素振り」ならぬ「素吹き」によって、腹式呼吸で一定量の息を丹田に溜め込んで短く一気には吐き出すための感覚と腹筋を作ることが極めて有効だと考える。


やり方は、腹式呼吸によって2拍子で息を吸いこみ、5拍子息を止めて丹田に息が溜まっているのを意識しつつ、6拍子目に軽く結んだ唇を破裂させるように一気に息を吐き出す。


私の場合は、糖尿病の運動療法としてエアロバイクを漕いでいるので、ペダルを回すのに合わせて2拍子息を吸い、5拍子下腹部の丹田に息を溜め込み、6拍子目に丹田を叩くように一気に吐き出している。吹矢を習い始めた頃から「素吹き」を実施しているが、いろいろ試した練習法では最も基本的で効果的だと思っている。


支部練習では、吹矢体操の後に全員で「1・2」「1・2・3・4・5」「パッ」の要領で「素吹き」を実施している。家庭でもいつでも実施できる。「パッ」と息を吐くと少し唾が飛ぶのでコロナ用のマスクを着けたままでもよいし、口の部分をハンカチかタオルで覆ってもよいだろう。


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