人生の余り道  (吹矢を楽しむ)

第15回涸沼杯

猛威を振るっていた新型コロナ第5波が小康状態になったことを受けて、3月以来約8か月ぶりに第15回涸沼杯が11月8日〜9日に実施された。茨城県内が対象で11支部45名が参加、土浦ポプラ支部からは7名が参加した。


久し振りの試合だったので少し緊張したが、例の如く心の中で「いつもどうり」を念仏のように唱えつつ実施して第1ラウンド満点。その後は落ち着いて第4ラウンドまで満点。『もしかしたら---』と欲が出た途端の第5ラウンドに2本を外して合計206点だった。勿体なかった。平常心の大切さを再認識した。


こうした試合でいつも気づくのだが、殆どの人が吹いた時の筒の動きが目立つ。せっかく狙いを定めたのに、吹く瞬間に筒が動いてしまうと狙いがずれた状態で矢が飛び出して、全てが無駄になってしまう。


基本動作6の「吹く」は吹矢におけるクライマックスであり最も大事な瞬間だから、精神集中して効果的な矢を放たなければならない。私は、吹矢を始めた最初の段階から「体を動かさない。筒を動かさない」ことを常に意識して練習してきた。


涸沼大会の楽しみでもある懇親会での吹矢談義でこのことが話題になった。言葉では説明し尽くせなかったし、文字にすれば尚更伝えることの難しさを感じるが、大切なことだから敢えて説明を加えたい。

前提

1 具体的説明はHP「余り道」の吹矢・理論編を参照

2 右利き、右目が利き目

3「的付け」について

射撃では、照準具を利用して直接目標を見て「狙う」ことができる。

吹矢では、目と口が離れているため筒の延長線上に的を見ることができないが、筒先を見通した先が的に中る位置は確認できる。つまり、吹矢における照準は、筒先を的のある位置に向けることであり、それを「的付け」と言う。(私見)


1 無理のない自然な構え

基本動作2の「構える」姿勢に無理があると吹く瞬間に体が動いてしまうので、常に無理のない姿勢を保つことが重要である。

その練習法は

@ 矢を入れずに、脇を軽くしめて筒を持ち、筒を的付けしたまま約5秒間目を閉じて吹く。薄く目を開けて筒のずれ具合を確認する。もし左にずれていればその分だけ身体を右に向ける。

A 矢を入れて@と同じ動作で実際に矢を飛ばす。筒がずれない状態が最も自然な構えとなる。


2 吹くことで筒や体に動揺を与えない。

胸に吸い込んだ息を強く吹くと、胸⇒肩⇒筒が動いて矢の精度が落ちる。胸を動かさないためには、基本動作5の「息を吸う」で、上半身の力を抜いて筒を上げつつ大きく息を吸い込み、息を止めたらその息を丹田に落とす。

的付けを保ったまま意識を丹田に集中して、上半身の力を抜いて丹田を叩くように0.04秒で息を吐き切る。吸い込んだ息の8分目程度の力で吹く。


3 筒先に焦点を合わせて正しく的付けする

人間が2つの目を持っているのは距離を識別するためであり、2つの目に映った像は脳へ送られて脳の中で合わさって1つとして見ている。見えている側の目を「利き目」といい、方向は1つの目で認識できる。日本人の約90%は右目が利き目だといわれている。


目は一つの距離しか焦点を合わせることができない。的に焦点を合わせれば手前の筒先はぼやけて見える。一方、筒先に焦点を合わせても背景の的はそれほどぼやけないので、筒先に焦点を合わせて最小限の誤差で的付けするほうが命中率が向上する。


広い視野をもって安心感を得るために左目は閉じない。しかし、両方の目で筒先を見る必要はないので、左目を半眼にして利き目への集中度を高めて利き目だけで的付けをする。慣れない人には難しいことだが、練習すれば必ずできるようになる。


※目を大きく見開くと情報が入り過ぎて集中しにくくなるが、半眼にして視野を制限すると認識しやすくなる。近視の人が目を細めるのは、視野を制限した方が良く識別できるからである。

※見え方は人によって千差万別である。最盛期の王貞治選手は、球が止まって見えたというほど動体視力が優れていた。スクリーンショットのように映像認識が優れた人もいる。故に「狙い方」もいろいろあってよい。私は弓道も射撃も経験しているので、そこで学んだ感触を吹矢の的付けに応用している。


4 矢が筒を出た後も筒先を見る

基本動作7の「息を調える」における残身・残心を確実に実施することは、次の矢を生かすために極めて重要である。吹いた直後に目で矢を追うと筒が動いていることが分からない。筒を出た矢はもうコントロールできないので目で追っても意味ない。0.5秒でよいから筒先に意識を置いて筒の動きを確認する。


その後に的に焦点をずらして中った位置を確認する。矢が左に中っても筒が左に動いたなら的付けは間違っていない可能性がある。筒先の動きを確認しないまま右に修正すると、折角正しかった的付けを誤った方に向けてしまう。


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