人生の余り道  (吹矢を楽しむ)

第1回全日本スポーツ吹矢選手権大会


2012年11月1日、墨田区総合体育館で「第1回全日本スポーツ吹矢選手権大会」が行われ、8メートル(初・二段)と10メートル(三段以上)それぞれ男女に別れた4部門に、900人以上の選手が参加した。


千日本選手権全景

吹矢競技場の風景

写真は会場の全体風景で、中央に的を約50個並べて両側から約100人のグループが、3分以内に1ラウンド5本を吹く。 全部では10コグループあるので、全員が第1ラウンドを吹くのに約1時間かかる。次いで同じ要領で第2〜第4ラウンドまで順次吹いていく。


他のスポーツと異なり、吹矢は筋力の勝負ではないのでとても静かに試合が進む。会場内に聞こえるのは矢が的に当たったときの「タッ」「タッ」といった小さな音だけで、見る側にとっては手に汗握るような熱気は感じられないが、選手にとっては大変な緊張感で、見た目とは異なり静かな戦いが進行していることを実感する。


私は緊張感で頭が真っ白になるといったことはないが、結構皆さん緊張しているようで、決勝ラウンドの時の隣の人は「心臓がバクバクだ」と小さな声で何度も言っていた。

そっと顔を見ると、真っ青で目が空ろになって別世界をさまよっている感じだった。唇が乾いて、強く吹くときに息が漏れてしまうこともあるようで、毎日が日曜日の昨今、時にはこうした緊張感も良い刺激になる。


さて、試合の結果だが、予選は1ラウンド5本(35点満点)を4ラウンド吹き、合計140点満点の上位5人が決勝戦に進み、決勝ラウンド5本を吹いて合計得点(175点満点)で競う。

私が参加した10メートル男子の部は、最も人数が多く420名だった。私は132点で予選を1位(同点者3名)で通過した。続いて決勝ラウンドを行ったところ163点で同点1位が2名になったので、更に1ラウンドの決定戦を戦った。私は5本中4本が真ん中に当たって幸い優勝することができた。


優勝カップ

右手に選手権の優勝トロフィー、
左手に日野原杯

表彰の写真では、右手に持っているのが選手権の優勝トロフィーだが、左手の優勝カップは「日野原重明杯」としていただいたもの。

これは10メートルの部の男女で最高得点をとった者に与えられる。一般に筋力の競技では男性が勝つのが当然だが、一種の呼吸法で決まる吹矢では女性が勝つことがよくある。

呼吸法に造詣の深い日野原先生はスポーツ吹矢の最高顧問をされているので、先生の100歳を記念して去年から授与されるようになった。

何とか勝ちたいとは思っていたが、記念すべき第1回の全日本選手権大会で優勝でき、しかも日野原杯も頂けたことはとても嬉しい。そして更に嬉しいことは、最近の練習法が間違っていなかったと実感できたことだ。


即ち今回の勝因は、矢の整備にあったと思っている。春に行われた青柳杯で勝てなかった原因のひとつに、矢の整備・調整が適切ではなかったと考え、今回の選手権に向けてこれまでとは異なる準備をした。


矢は、「矢切り」という道具を使って筒の太さに合うように切るのだが、どうしても若干の誤差が出てしまう。それは飛び方に影響する。矢に番号をつけて何度も吹いて矢の個性を把握し、その個性に合うように少し上を狙ったり、左を狙ったりするが、実際にはそんな器用なことができるものではない。

筒先1ミリの差が的では約1センチになるのだから、1本ごとに筒先数ミリの差をつけて狙うことはとても難しく失敗の原因になってしまう。


そこで「矢切り」を極めて慎重に行って同じ太さに切るようにした。必ず「試し切り」や「試し吹き」をしてほぼ同じに切れていることを確認しつつ5本以上の矢を切り整える。更に慎重を期するため、時を違えて切った矢は決して同じグループとしては使わない。つまり、昨日切った矢と今日切った矢は混ぜては使わない、ということだ。いくら同じに切ったつもりでも、時が経てば手の感覚は同じとはいえないからだ。


その結果、セットで使う5本の矢は同じように吹けば常に同じところに当たるようになったと感じる。勿論同じところを狙っているつもりでも狙いそのものに多少の狂いはあるし、同じ力で吹いているつもりでも微妙な強弱があるから、常に満点とはいかないが、気を使う要素がひとつ減ったことは、とても安心感につながり、命中率が向上したと思っている。


本大会はこれまでは「全国大会」と称して行われていたものだが、来年の東京国体で初めてデモ種目に採用されたことから、将来の正式種目採用に向けたステップとして「全日本スポーツ吹矢選手権大会」に名称が変更になった。


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