人生の余り道 (時の足跡)

ロスト・フライト

◆スタッフ

監   督 :ジャン=フランソワ・リシェ

原案・脚本 : チャールズ・カミング

キャスト

トランス機長 : ジェラルド・バトラー

殺人犯・ガスパール : マイク・コルター

◆あらすじ
ロスト・フライト

トランス機長は、シンガポール発東京行きのブレイザー航空119便に乗務、乗客16名と警官に連行された殺人犯が搭乗したLCCの機長。経路上の悪天候が予想されたが、燃料費節約のため会社から迂回ルートを却下されてしまった。


悪天候ゾーンを避けるため高度を上げたが、落雷により電気系統が故障してコントロール不能に陥り、緊急時の燃料放出も片翼ができず、現在地も把握できないまま飛行可能時間が「あと10分」となった。


冷静なトランス機長が海上着水を覚悟したその時、島影が目に入り森林の中に僅かな平坦地を見つけた。彼は巧みな操縦技術で不時着に成功したが、そこはフィリピンの反政府ゲリラが支配するホロ島だった。


緊急事態を会社に連絡する手段を探すため、警官が機中で死亡したため殺人犯・ガスパールに手助けを指示して森の中へ入った。廃屋に残されていた古電話を漸く修復して、会社と愛娘に最小限の連絡に成功した。


一方本社では、119便の機影が消えたため捜索中のところ、電話連絡から不時着場所を割り出し、フィリピン政府に救助を要請したがうまくいかず、近くにいた私的な傭兵部隊を緊急派遣して救助にあたらせた。


機長とガスパールは飛行機に戻ったが、時すでに遅く乗客らはゲリラに拉致され、彼らの拠点に連れ去られていた。機長らはゲリラの銃を奪取して激しい戦闘の末乗客らを救い出して飛行機に戻った。


機長と副機長の懸命の修理で最小限の機能が回復、ゲリラと交戦中に傭兵部隊が到着して危機一髪離陸に成功した。トランス機長の卓越した操縦技術で近隣の島の空港に着陸、死者も出たが多くの乗客乗員を救出することができた。


◆感 想

航空パニックと脱出劇が加わった、終始ハラハラ・ドキドキの迫力満点の作品だった。


乱気流に巻き込まれた機内の切迫する有様と、トランス機長の奮闘による不時着までの活躍が迫力満点だった。緊急の燃料全放出に失敗したことが後のホロ島脱出成功の伏線になっているのも面白い。


機長らが不時着機をドライバーなどで修理していたのが奇異に感じたので調べたら、ブレイザー航空119便の設定は1965年に初飛行したマクドネル・ダグラス社のDC-9でかなり古く、旅客機では唯一バッテリーを搭載していた。現在のジェット機は電子制御なので人間による現場修理はできないが、飛行機の特性をしっかり掴んだストーリーで納得した。


当初に、米国映画なのにいきなりシンガポール発東京行きとあって意外な気がしたが、ゲリラが活動するフィリピン諸島の近くを飛行する状況設定が内容とマッチして、とてもリアリティのある作品になっていた。


実際のホロ島は、2019年1月にイスラム過激派が教会を爆破して20人が死亡した事件があり、当時のドゥテルテ大統領が過激派壊滅作戦を展開した、いわくつきの島であった。


機長は連絡手段を探すため、殺人犯のガスパールの手錠を外して一緒に森に入ったが、危険ではないかと思った。しかし、殺人犯を残せば乗客・乗員と一緒にいることになる。自分が連れて行った方が危険だとしても責任を負うことができる、と考えたのだろう。


不時着してから息つくまもなく次々と脅威がやってくるが、割とテンポ良く解決に向かっていく。戦闘場面も多々あって、全てを背負う機長の覚悟と責任感をジェラルド・バトラーが見事に演じている。


機長としての覚悟と責任感を描く場面が随所に見られてとても印象が良い作品だった。誰もが自分の仕事をトランス機長のように誠意と責任感をもって実施したら世の中は明るくなるのになぁー、と思った。


2023.12.10観賞

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