人生の余り道 (時の足跡)

プラン75

◆スタッフ

監督・脚本 : 早川千絵

キャスト : 角谷ミチ : 倍賞千恵子

岡部ヒロム : 磯村勇斗

岡部幸夫 : たかお鷹

成宮瑶子 : 河合優実

◆あらすじ
プラン75

2016年、障害者施設殺傷事件が起きた。社会の役に立たない人間は生きる価値がないと考える犯人は、施設に入居する人々を次々に殺害、そして自らの命を断った。


超高齢化社会になった近未来の日本、自己責任という風潮が強くなり、満75歳以上の高齢者が自ら生死を選ぶ権利を保障する「プラン75」が国会を通り、各自治体が制度の普及に力を入れた。


申請窓口の岡部ヒロムは、高齢者に「プラン75」の意義を説明して申請を勧める。応募した老人に対しては"その日"が来るまでコールセンターのスタッフが親身にサポートして最終施設に送り出す。


夫と死別してひとりで慎ましく暮らす78歳の角谷ミチは、ホテルの客室清掃の仕事をしていたがある日突然解雇された。新しい仕事も簡単には見つからず、役所からは生活保護を受けるよう勧められる。


ヒロムは、炊き出し所で途方に暮れた様子のミチに声をかけ、「プラン75」加入の意思を確認した。コールセンターに引き継がれたミチは、聞き上手の瑤子に親しみを感じて身の上話をするようになった。


ある日、ヒロムの窓口に音信不通になっていた叔父の岡部が姿を現した。ヒロムは心の中では叔父に立ち直ってほしいと思ったが、将来に希望のない叔父は現実を逃れるように手続きを進めた。


二人にとっての"その日"が来た。

ミチは身辺を整えて郊外の最終施設に向かった。ヒロムは叔父を車で施設に送った。

二人はカーテンで仕切られた隣同士のベッドに寝ていた。カーテンの隙間からお互いの様子が見え、ミチには薬が効いて眠りに落ちる岡部の様子が分かった。


ヒロムは途中で思い直して叔父を止めるべく施設に戻ったが、叔父はすでにこと切れていた。せめて遺体を自分で処置しようと思い、施設から運び出したがスピード違反で警察に捕まってしまった。

一方、姿を消したミチは、寒空の中をよろめきながら何処と知れず歩き続けている。



◆感 想

早川監督は、初の長編デビュー作品として、年齢による命の線引きというセンセーショナルな題材を描いて第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品、初の長編作品として次点に選ばれた。


2025年には国民の5人に1人が75歳以上になると言われる超高齢化の日本、他者への不寛容な風潮が強くなると、社会が突然異変を起こして異質な考え方や制度が生まれるかもしれない。


早川監督は、それを「命の選択権」という形で描き出した。いずれ現在の延長線にはない"世界"が来るとすれば、かつて"姥捨て山"があったように果たしてどんな形の「命の止め方」が現れるのだろうか。


残念だったのは、「プラン75」の根源となる最終施設がとても非現実的だった。ヒロムが簡単に入って叔父の遺体を持ち出し、生き延びたミチが誰に発見されることなく施設を抜け出した。あまりにご都合主義的な展開だと思う。


この映画、どこに着地するんだと思いながら見ていたが、着地しなかった。問題提起するけど結末がない。死体を乗せたヒロムがスピード違反で捕まり、住む家も収入もないミチが施設を脱出して、そのあとどうなる。何を暗示しているのかわからない。


2022.07.06観賞

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