人生の余り道  (時の足跡)

レヴァラント 蘇えりし者

スタッフ

監  督 : アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ (アカデミー賞 監督賞)

撮  影 : エマニュエル・ルベツキ (同 撮影賞)

音  楽 : 坂本龍一

キャスト : ヒュー・グラス : レオナルド・ディカプリオ (同 主演男優賞)

   ジョン・フィッツジェラルド : トム・ハーディ

   アンドリュー・ヘンリー : ドーナル・グリーソン

   ジム・ブリッジャー : ウィル・ポールター

あらすじ

レヴェナント

時は1820年代のアメリカの西部開拓時代。主人公のヒュー・グラスはインディアン女性との間に出来た息子を連れて、ヘンリー隊長の案内役として狩猟隊の仲間と共に毛皮をとる日々を送っていた。ある日いつものように、獲物の毛皮の輸送準備をしていると、突然インディアンの襲撃にあい、大半が殺されてしまった。隊長以下約10名の生存者は、グラスの案内で陸路を拠点である騎兵隊の砦を目指して逃れた。


ところが、前方を進んでいたグラスが子ずれの大熊に襲われて、瀕死の重傷を負ってしまった。狩猟隊はグラスを担送するが、次第に道が険しくなったため、ヘンリー隊長は高額の報酬を条件にフィツジェラルドに、グラスの息子とともに残留して、グラスが息を引き取ったら埋葬するよう命じた。しかし、報酬目当てのフィツジェラルドは、グラスの息子を殺し、まだ息のあるグラスを生き埋めにして立ち去ってしまった。


目の前で息子を殺されたグラスは、渾身の力を振り絞って埋められた穴から這い出し、息子の仇を討つためフィツジェラルドに対する復讐心を燃えたぎらせて、重症の体を引き摺って極寒の大自然の猛威に立ち向かいながら追跡行を開始した。


実は、あらすじとしてはこれからが本番なのだが、説明はしないことにする。ただ言えることは「とにかく凄まじい映画だ」ということ。これが現実に起きたことかと驚くような画面が続く中で、例えようもなく美しい大自然と坂本龍一による印象的な音楽と共に展開される追跡劇、言葉で説明しても伝わらないと思うので是非映画館で見ていただきたい。

感 想

本映画は、1823年に実際に起きた事件の映画化で、アメリカではかなり有名な出来事なので何度か映画化もされているという。本作品ではレオナルド・ディカプリオが主人公のヒュー・グラスを演じ、CGやスタントを極力排した凄まじいサバイバル劇を演じて、初めてのアカデミー賞主演男優賞を受賞した。また、西部開拓時代の雰囲気を出すため、ロッキー山脈をはじめカナダやアルゼンチンでロケをし、自然な光のもとで雄大な大自然を写し出して、同じく監督賞や撮影賞も受賞している。


映画は冒頭から、グラスたちの狩猟隊をインディアンが襲撃する壮絶な場面から始まり、逃避行になってすぐにグラスが大熊に襲われるシーンがあるのだが、この場面は当然CGだとは思うが、今までのCGの感じとは全然異なるすごい迫力だ。あれだけ熊にやられたら普通なら死ぬだろが------この点は映画だから誇張されているのだろう。


ストーリー的には、敵対する2つのインディアンの部族、狩猟隊もアメリカ人のグループとフランス人のグループが登場して、最初はわかりにくくて戸惑った。なぜフランス人が登場するのかわからなかったが、そのフランス人の狩猟隊はインディアンから暴利をむさぼったり、協力しないインディアンを殺して女性をさらってレイプするなど一方的に悪者に仕立てられている。一方、アメリカ人の狩猟隊はグラスがインディアンの女性を救い出すなど善人に描かれているのが不思議だった。


観賞後に調べたら、フランスは16世紀中ごろからアメリカ大陸に進出して中北部に広大な植民地を築いたが、ナポレオンがイギリスとの戦争の資金源とするため、1803年にこの植民地をアメリカに売却した。そして本映画の舞台になった1823年には、まだフランス人の毛皮商人が各地で商売をしていたのだろう。それにしても、この映画がフランスで上映されたらブーイングが起きるのではないか、と思われるくらいだった。


字幕スーパーではグラスたち狩猟する者を「罠猟師」と訳していた。珍しい名称だと思って調べたら、新大陸に渡った西欧人は17世紀ごろから帽子(ビーバーハット)を作るため軟らかい皮のビーバーを罠を仕掛けて獲ったため、彼らを罠猟師と呼ぶようになった。ところがビーバーが絶滅寸前になり、丁度この頃銃が発達したため、今度はアメリカバイソンを獲るようになった。


映画では、白い石の小山の前に立つグラスが、殺された妻を回想する場面が何度か映し出されていた。意味が解らなかったが、この白い山は皮と肉を剥がした後に肥料にするためのバイソンの頭骨の山であった。バイソンはインディアンにとっては、衣食住全てを依存する最重要な動物であったが、インディアンの食糧を断つために乱獲を奨励したと言われている。その結果、六千万頭いたバイソンも1890年には絶滅寸前の1,000頭未満にまで激減した。こうした画面も、イニャリトゥ監督にとっては当時のインディアンが置かれた状況を忠実に再現するため必要だったのだろう。


2016.04.30観賞

inserted by FC2 system