人生の余り道  (時の足跡)

シーズンズ  2万年の地球旅行

スタッフ

監  督 : ジャック・ペラン & ジャック・クルーゾ

日本語版ナレーション : 笑福亭鶴瓶 & 木村文乃

あらすじ

シーズンズ

氷河期が終わる2万年前の地球上には、ジャコウウシなど寒さに強い僅かな生物しか生き残っていなかったが、その後温暖期に向かい、およそ1万年前には植物が地表を覆い、森林の中であらゆる生命が春を謳歌していた。馬、オオカミ、イノシシ、クマなどが森で生き残るための戦いに明け暮れ、あるいはオオヤマネコなどの小動物も子育てに忙しい時を送っていた。


しかし同時に、人間達も増加して農業を営み、森林を切り開いて牛や豚やヤギなどを家畜として飼育し、森を田畑に変えることによって森の生物たちの生活圏を奪った。そして産業革命、戦争、農薬などによって自然の生物を危機にさらしていった。寒冷期という危機を生き残った生物たちを襲った最大の脅威は、人間という存在だった。しかし、人間によって絶滅に追い込まれた動物もいたけれど、今では人間の手によって絶滅しそうな動物を保護する取り組みが進み、未来に向けて共存していこうとしている。

感 想

本作品の二人の共同監督は、2001年に「WATARIDORI」で空を飛ぶ渡り鳥を鳥と同じ目線で描き出し、2009年に「オーシャンズ」で海洋生物の雄大な姿を撮影し、共にとても印象深い映画を作り上げた。今回の作品は対象を空、海から陸に移して陸上の生物を主人公にした。従来の野生動物を主人公とした映画は、アフリカの大自然や南極など厳しい自然で生きる動物の姿をリアルに描いていたが、本作品では、およそ2万年前から現在に至る生き物の歴史を、彼らを主人公としてその変遷を描いている。


強い子孫を残すための馬や熊の雄同士の命懸けの死闘、雌鹿の出産の場面や母鳥の愛情溢れる子育てを始め森の生き物の珍しい生態を写し出している。なかでもオオカミが集団で馬を追い回す場面や、イノシシが林の中で狼に追われる場面あるいはメスを巡るオス熊の戦いなどの映像はとても迫力があって、よくこんな場面が撮影できたかと驚いた。解説によれば、無音小型バギーを開発し、これまで以上に軽量化された小型軽飛行機を使用したそうで、ペラン監督とクルーゾ監督の持ち味がよく表れていると思った。


映画では「2万年におよぶ生命の営み」を描いたというが、実際に撮影できるのは現在生きている動物でしかないので、極寒の吹雪の中を進むジャコウウシの群れを、ナレーションで映画の巻頭では「2万年前の極寒に耐える姿」と説明し、終盤には「人類に追われる姿」と説明している。 同じく終盤に登場する原始人の少女が、群れを追われて腹を空かした狼にえさを与え、これがきっかけで狼が人里に住み着くようになり、「人類の友」が生まれ野生動物との共生の時代に入った、との説明は強引に過ぎた。


終盤に写し出されるのは、2万年もの長きに渡り様々な過酷な環境を生き延びてきた動物たちが、人類の台頭によって苦境に追い込まれていく文明批判であった。動物の自然な姿や不思議な生態などの未知の映像を期待したが、「実際のままを記録」する本来のドキュメンタリーとしての中立性は保たれておらず、監督の主張を全面に押し出した作品となっている。


2016.01.22観賞

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