人生の余り道  (時の足跡)

 マイ・インターン

スタッフ

監  督 : ナンシー・マイヤーズ

キャスト : ベン : ロバート・デ・ニーロ

ジュールス : アン・ハサウェイ

あらすじ

マイ・インターン

男やもめのベンは40年間の会社員勤めを終えて悠々自適の毎日を送っているが、70歳になっても社会との接点を持ちたいと思っている。そこで、やり手のキャリアウーマンのジュールスが起ち上げ、1年半で従業員を10倍に増やして急成長しているニューヨークのアパレル通販サイトを運営する会社にシニア・インターンとして応募する。


採用されたベンはCEOのジュールス直属に配置されたが、必要ないと考えているジュールスから仕事を与えられない。ところが、人生経験に基づくベンの的確なアドバイスにいつしか社員から信頼を得るようになっていく。ある日ジュールス専属の運転手が飲酒したことをきっかけにベンが運転を代わることになった。出来すぎのベンを嫌ったジュールスから配置転換されそうになるが、ベンの的確な助言に思い直したジュールスは謝罪し、幅広く仕事を任せることを約束した。


家庭のジュールスは専業主夫・マットとの幸せそうに見えた夫婦関係だったが、ベンは偶然マットの浮気現場を目撃してしまう。ジュールスは気乗りはしなかったが幹部社員の勧めで新たにCEOを迎えるため、ベンとともにサンフランシスコへ向かった。その夜、ベンはジュールスから、マットの浮気を知りつつも夫婦仲を修復するために、会社を経験豊富なCEOに任せることを検討しているのだと明かされる。


帰宅したジュールスは、二人がより多くの時間を持つためにもCEOを外部から迎えることをマットに伝える。マットはジュールスが浮気について知っていることを察する。翌早朝、ジュールスはアドバイスを受けるためベンの家へ向かった。ベンは「仕事ぶりも生き方も尊敬できる、夫の浮気ごときで自分の夢を諦めて欲しくない」と伝えた。それは紛れもなく、ジュールスが今一番欲しい言葉だった。


突然会社を訪れたマットは、ジュールスに、浮気相手との関係を断つこと、専業主夫としての将来に不安があったことを話した上で改めて謝罪し、やはり夢を追いかけることをやめないで欲しいと伝えた。ジュールスはCEOをやめることなく、夫婦生活もやり直すことを決めた。


感 想

「老人」というほどは老けておらず、まだ社会とのつながりを求める活動的な「シニア」に勇気を与えるような、コメディタッチのホッコリ温かみのある映画である。


名優ロバート・デ・ニーロ演じる70歳のベンが、今時のネット企業で若いキャリアウーマンの下で働くという設定が新鮮だ。現代のどこにでもあるような仕事や家庭に悩む働く女性の問題や、家庭に入った夫の焦りや葛藤など誰でもが共感できる悩みを、人生の大先輩であるベンが優しくユーモラスに包み込んでいる。


ベンはPC やFacebookなどに戸惑いつつも、スーツにネクタイ姿でクラッシックな鞄を愛用し、特に胸のハンカチは女性が涙を流した時にそっと差し出すために備えているなど、若者にないこだわりを持っている。そして、温厚で視野が広く気遣いができて誰からも愛されているが、それには条件があって、ベンは、絶対にジュールスや周囲の出来の悪い若者に対して自分の価値観を押し付けたり、その生き方を否定したりはしない。だからこそ、若い彼らは「みんなのおじさん」としてベンを頼りにするようになっていく。まさに理想のシニア像が描かれているこの映画は、シニア世代への応援歌ともいえる。


映画の終わりの方で、夫の浮気に悩んだジュールスが自分の去就について早朝にベン宅を訪れて相談する場面が描かれている。既にCEO候補者には採用すると伝えたはずなのになぜ相談に行ったのだろうか?「人は、自分が欲しい答えを返してくれる人に相談する」といわれている。ジュールスは、心の中では「夢を諦めるな」と言ってほしかったのだ。ジュールスの心を見抜いているベンは、ジュールスの心を代弁するようにそう答えて背中を押した。


映画の中で、「寿司を食べようか」とか「さよなら」などの日本語、日本文化が所々で触れられている。意外だったし、嬉しかった。そこで少し深読みしてみると、この映画は欧米以外では日本への配給を意識して制作されているのだろう。「アナ雪」と同じねらいである。映画市場はいまや中国が世界最大であるが、中国には年間34本の輸入制限があり「ロボコップ」や「アベンジャーズ」のようなアクションが主流で、老人と若者の両方を主人公としたストーリーはまだ一般的ではないとの判断があるのだろう。


しかし、先日の習近平国家主席の訪米期間中に中国電影集団と米国映画協会は、中国の映画輸入本数規制を撤廃することに調印した。まだ公式には発表されていないが2016年1月1日から実行される見通しとなっている。これからはハリウッドで作られる映画が中国向けに変化していくことになる。


2015.11.06観賞

inserted by FC2 system