人生の余り道  (吹矢を楽しむ)

実践編

吹矢の極意は極めて単純で、同じ条件で整備した道具で、同じところを狙って、同じ力で吹くことにある。とはいえ、同じ条件でも当たることも当たらないこともあるので、いろいろ試して原因を見つけて絶えず改善する。吹矢の練習とはこれに尽きる。

矢の選別

矢は筒の径に合った太さに切る。垂直にした筒に矢を入れた時に小さな摩擦音を立てながら落ちていく太さであることが望ましい。

試し切り⇒試し吹きを繰り返して斉一な矢を揃える。しかし練習の間に矢に微小な傷ができるので適時に不適格な矢を除外して、常に斉一な矢を揃えなければならない。

矢の振るい落とし

傷ついた矢が試合用から外れて溜まっていくので、3〜4カ月ごとに矢の振るい落としを行って不合格の矢を破棄する。

例えば、30本の矢をそれぞれ3回吹いて、3回とも当たった矢〜3回全て外れた矢に振り分けて、矢の信頼性を区別して全て外れた矢は破棄する。この方法は、当たりそうな矢を選別するのに役立つし、何よりも不合格の矢を破棄するとなればかなり真剣に吹くので、技量の向上にとても有益だと思っている。

練習における心構え

上達のための唯一かつ最大の方策は練習である。練習に勝る上達法はない。

試合では、練習以上の成果を得ることはできない。だから、練習で底上げすることによって初めて、試合でより良い成果を上げることができる。

練習の優先順位

命中率を向上させるためには、@道具を最良の状態に保つ A正確に狙う(的付けする) B同じ力で吹く ことが重要である。しかし、この3要素を同時に向上させることは難しいので、やりやすいと思われることから優先して解決していくことが必要である。


まず@矢と筒を最適な状態に準備し整備する。これを確実に実施しておく。次にAとBではBの方が難しいので、易しい方のAを取り敢えず「できている状態にして」Bを優先して向上を図る。


具体的には、利き目の焦点を筒先に合わせて、的付けを変えずに1ラウンド5本を吹く。例え命中しなくても的付けを変えずに矢痕がこぶし大ぐらいにまとまるまで続ける。概ね矢痕がこぶし大ぐらいにまとまったら的付けを微修正してまた5本吹く。何度もこれを繰り返して概ね全部が5点圏に入るようになれば、吹く力はかなり安定してきた証拠であり、当然7点圏に中たる矢も増えてくる。


吹き方

吹く際は、丹田に吸い込んだ息を太鼓をたたくように瞬時に吐き出して吹かなければならない。しかし「吹矢」という言葉の先入観から胸で吹くことに拘って、筒から矢が出るまでの約0.04秒以内に吹き切ることが難しい。しかし、何年かかろうとも上半身の力を抜いて臍下3寸の「丹田」で叩くように吹くやり方に習熟しなければならない。


呼吸とは、吸うこと=吹くことで成り立つ。もし吸い込んだ空気量が異なれば、例え同じ力で吹いたとしても出る力が変わる。ところで、強い矢は命中率が向上するが、反面強く吹けば上半身が揺れやすくなる。従って、上半身が揺れない八分目程度の力で吹いて体の揺れを小さくして安定した矢を飛ばすことが重要である。


繰り返し

「失敗から学ぶ」といわれることがあるが、吹矢の練習では「成功から学ぶ」気持ちが大切である。矢が中たらない原因はたくさんあるので、何が原因で当たらないか判然としない。従って、成功した時にはその感触を覚えてそれを再現する。忘れてしまっても次に成功した時にまたその感触を覚える。これを繰り返すことによって、10本に1本の命中だったものがいずれ5本に1本の命中に、そして次第に命中精度が向上していく。


さて、的付けは吹くよりも易しいと書いたが、実はある程度上達してくると、この的付けが実に難しく感じるようになる。筒先の1ミリのずれは的では1pのずれになる。吹矢では、吹く直前の最も緊張する場面で正確な的付けをするためにはかなりの集中力が必要となる。実際には狙うことと吹くことには軽重はないので、両者を常にフィードバックしつつ演練することが重要である。


初心者の練習で重視すること

あまり難しいことを考えずに、次の4点に留意して練習すれば比較的短期間に初段に合格できる。

・筒先をしっかり見て吹き、吹いた後に筒先が上下左右に大きく動かないこと

・息を丹田に溜め込むつもりで息を大きく吸い、下腹をたたくように一気に吐き切ること

・1矢ごとに狙いを変えないで、5本とも同じ的付けで吹くこと

・当たった矢をイメージして、それを再現する気持ちを忘れないこと


二段以上の上級者の練習

・厳密な的付けを繰り返して練習すること

・大きく息を吸い込み、八分目の力で下腹をたたくように瞬時に吐き切ること

・吹いた後の筒先を動かさない。そのためには、吹いた瞬間は筒を出た矢を目で追うことはせずに利き目の焦点を筒先に維持すること

・納得した吹き方の感触をよく覚えて、自分の中でイメージを作り上げること

・道具を常に最適な状態に整備すること

動じない心の作為

矢の飛び方に影響すると思われる各種条件(会場の広さ、照明、温度・湿度、雑音など)につい常に注意して影響度を体得する。競技会では個々の条件に神経質になることなく試矢3本の間に全体として把握する。

どのような環境でも機敏に反応して冷静に吹けるようになるためには、他支部の練習に参加させてもらうなど、普段からいろいろな場所、仲間と練習する機会を作為してものに動じない力を養っておくこと。


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