人生の余り道 (歩くを楽しむ)

(元気な老人)

概 要

キャンプ場が多いためテント泊が軽易にでき、コースの組み方により期間を1週間から10日ぐらいに設定できるので、富士五湖周遊の歩き旅を計画した。富士五湖周遊は2011年にも実施したのでこれで2回目になるが、今年は第1日目に標高1786m(登山口からの標高差は約1200m)の三ッ峠山に登って、雄大な富士山を眺めることにする。

三ッ峠は半世紀以上も前の高校生の時に登ったことがあり、この時は夜間の登山だったので明け方に突然現れた富士山の勇姿が強く印象に残っている。


期間平成26年7月30日(水)〜8月6日(水)8日間
距離190キロ1日平均24キロ

旅日記

7月30日(水)晴れ

達磨石

パワースポットのひとつ”達磨石”

新宿から中央線大月駅を経て10時半に富士急行の三ッ峠駅に到着。駅前の小さな町並みを過ぎるとすぐに登り坂にかかる。温泉を楽しめるグリーンセンターを過ぎて約1時間歩いて、達磨石で昼食休憩をとる。三ッ峠山は昔から祈りと癒しの場所として知られており、八十八大師、神鈴権現などのパワースポットを経て落差100mの垂直の岩壁の下を抜けて、約5時間かけて山頂付近の三ッ峠山荘に到着した。


霧がかかって富士山は見えなかったが、山荘のご主人によれば「明日の朝は良く見えるよ」とのこと、取り敢えず安心し、早速風呂に入る。水は大切、循環浄化した水であるが山頂で風呂に入れるとは、予期せぬ幸運だった。宿泊者は一人、角部屋の見晴らしの良い部屋が使えた。


7月31日(木)晴れ

朝焼けの富士

三ッ峠から見る朝焼けの富士

5時起床。朝焼けに映える富士の姿が美しい。三ッ峠は富士山を真近かに見る最高のビューポイント、眼前に迫る富士の勇姿には圧倒される。河口湖側の登山口からは1時間ぐらいで登れるので、この日も日の出の時間に合わせて登ったグループが何組か見られた。また三ッ峠はロッククライミングが盛んな山でもあるが、重い荷物を背負ったクライマーはこちらから登っている。


朝食後三ッ峠山頂に向かったのちに、河口浅間神社コースを下りる。三ッ峠は四季折々の美しさが多くの写真家を魅了する。今は緑一色であるが、紅葉や厳冬の雪景色もさぞ魅力的だろうと想像しながら、気温18℃、下界の炎暑が考えられないくらいの涼しさ

自由キャンプ場

小さな私のテント(湖岸の水色のテント)

の中を歩く。体を支える膝に力が入らなくなったので「母の白滝」で暫く休憩する。下るにつれ気温は上がったが概ね22〜24℃で、快適な森林浴であった。


昼前に麓の浅間神社を経て河口湖北岸を歩く。日差しは強いが気温は28℃止まり、とても爽やかで歩きやすい。本日は西湖の「自由キャンプ場」でテントを張る。3時過ぎにキャンプ場に到着、2日後の花火大会前の間隙で、キャンプ場は空いており予約なくても泊まれた。隣のテントでは父親が小学生の息子と男同士のキャンプを張っており、とてもよい雰囲気だった。


8月1日(金)〜2日(土)日中は晴れ

青木ヶ原樹海

青木ヶ原樹海の遊歩道

この時期、湖畔のホテルはどこも高校生の合宿でにぎわっている。特にブラスバンドが多く、宿や周辺の空き地で大きな音を奏でて盛んに練習している。今日の目的地はすぐ隣の精進湖、時間はたっぷりあるので生徒たちの朝礼の様子を見ながらゆっくりテントをたたむ。


日差しは強いが青木ヶ原の樹海に入ると一挙に涼しくなる。樹海内は「東海自然歩道」が通っていて標識がしっかりしているので道に迷うことはない。鳴沢の風穴は涼を求める家族連れの観光客でにぎわっていた。風穴の中は別世界の涼しさ。穴を出た時に、涼しかった外が暑く感じることでその涼しさをより実感する。


15時過ぎ、精進湖キャンピング・コテージに到着、1泊800円で安くて良いキャンプ場だが「ゴミはすべて持ち帰り」、車の人には問題ないがバックパッカーには厳しいルールだ。次の「道の駅」まで持って行かなければならない。トイレと水道に近い場所を選んで早速テントを張り、近くのコンビニまで食料の買いに出かける。精進湖はボートやカヌーが盛んで、湖面にそのための設備が設置されている。6日から「全国高校総体」や「関東高校新人戦」が予定されている。


夜、テントで横になってラジオを聞いていると、20時頃「山梨県東部に大雨洪水警報」が発令されたことを知り、すぐにテントの補強をした。間一髪、終わった途端に大雨が降り出し、強風も吹き始めた。翌朝、テントは無事だったが、外置きの荷物が水浸しになってしまった。急ぐ旅でもないのでもう1日泊まることにする。幸い天気は良いので濡れ荷物を広げ、日中は近くを散歩して過ごす。


8月3日(日)晴れ

再び樹海に入って「東海自然歩道」を本栖湖に抜け、湖畔で暫し休憩。水分補給のため自販機に行くと、ここには空き缶を入れる籠が置いてない。カラ容器を始末できないので自販機を諦め公園の水を探す。経路上どんな小さな公園・広場でも水道の水は飲むことができる。外国の状況を知るにつけ、水の豊かな日本は本当に恵まれていると思う。

朝霧高原付近は東西から山地が迫って隘路になっている。駿河湾からの風の通り道になっており、多くのパラグライダーが軽快に飛び回っている姿が見られる。


(元気な老人)

田貫湖の手前で同年輩のバックパッカーに会う。バックパッカー同士として挨拶&雑談。この方、御殿場出身の元教師、50歳で退職して世界を歩き、今は終焉の地として富士の麓に住居を探しているという。なぜか私に親しみを覚えたらしく、一緒に家を探そうと誘われた。  (印度放浪)に戻る


田貫湖から見る富士

朝日を背景にした富士

本日の目的地は田貫湖、富士宮市の公営キャンプ場で施設も整っており、とても広く予約なしで宿泊できる。田貫湖は富士五湖とは異なり人造湖で、小さな湖であるが周囲には観光・キャンプ施設がもうけられている。テントの設営が終わって食料を買いに行ったら、受付が5時までとは聞いていたが、5時を5分も過ぎていないのに売店・管理棟は既に終了していた。いかにも公営らしく、時間厳守で 残念!!


田貫湖は「ダイヤモンド富士」で有名なところ、朝日を背に受けてシルエットのように浮かぶ富士山はとてもきれいだった。


8月4日(月)晴れ→雨→曇り

白糸の滝

白糸の滝

8時半にキャンプ場を発ち、林に囲まれて涼風が流れる県道を下って有名な観光地「白糸の滝」に立ち寄る。何となく雲行きが怪しく感じたので、近くのコンビニでビニール傘を買った。御殿場方面に向かう県道72号線に入って間もなく雨が降り出した。雨着を着るほどではなかったが、買ったばかりの傘がとても役に立った。


今日の目的地は、裾野市営の十里木キャンプ場であったが、雨のため時間をロスしたのでキャンセルして、愛鷹山登山者が休憩所として使う麓の公園で野宿することにした。全国的に猛暑といわれているが、ここは気温19℃、雨で寝袋が湿っているせいもありホカロンを使用しても寒く、なかなか寝付かれなかった。


8月5日(火)

コンクリート床の冷たさが直接伝わり暗いうちに目が覚めたので、濡れたままのズボンとシャツを身に着けて片づけを始める。あいにく霧が濃くて富士山は見えない。6時前に公園を出発、国道469号線を富士市、裾野市更に東富士演習場の広大な原野を左右に見ながら御殿場市に向かう。


富士浅間神社

富士山信仰の象徴である浅間神社

下るにつれ気温は上昇し昼前には30℃を超えるようになったが、須走に向け再び上り始めると27℃前後の歩きやすい気温になった。須走浅間神社で昼食休憩をとって十分に休んだのち、昔何度もトラックで越えたことのある籠坂峠を越え、17時前に山中湖村営のキャンプ場に到着した。


キャンプ場は、三島由紀夫、徳富蘇峰記念館のある「山中湖文化の森」の裏手にあり、場内は木々が茂りとても涼しく、施設も充実している。林間の日なたで寝袋や靴、衣類を乾かしながら、すぐにテントを張る。テントサイトは土、シート上に直に寝ても心地が良い。蚊もいないので手足を伸ばして天を仰いで体を休めた。


8月6日(水)晴れ

5時起床、気温25℃。寒くもなく暑くもなく、とても快適な朝を迎える。

昨夕炊事場付近に鹿がいたが、真夜中テント脇でガサゴソ音がするので外を見ると、ビニールのごみ袋が無くなっている。鹿に違いない。野生の鹿と一緒にいるようでとても自然を近くに感じて心地良かったが、同時に鹿がビニールを飲み込まないよう願った。


忍野八海の湧水

忍野八海の透明度の高い富士の湧水

本日は富士吉田に出て帰宅する予定。10キロ余りの距離なので、富士の湧水で有名な忍野八海に寄り道していくことにした。ファナックの工場群を抜けて12時ごろ忍野八海に着く。観光客であふれており、中でも中国・台湾など東南アジアからの観光客が多かった。世界文化遺産に登録されたこともあってか、各所の案内板は日英中韓の4か国語で書かれている。


富士吉田の浅間神社で無事に旅ができたお礼参りをしたのち、近くの郵便局でテント類を郵送して身軽になって帰路に着いた。



雑感

糖尿病対策としての歩き旅

4年前のお遍路の結果、長い間血糖値が高くて射っていたインシュリン注射が不要になったが、糖尿病の悪化を防ぐためにも、年に1度ぐらい「歩く期間」を設けて体のリフレッシュをしたいと考えている。とは言え年齢的に無理しないよう1週間余りの富士周遊の歩き旅が適当だと考えた。8日間の歩き旅の間に大量の汗をかいた。恐らく体重に近い量の汗を出しているので、老廃物を出し切って体内がきれいになった、と期待している。


それにしても大量の水分を補充するにあたって、道路沿いの自販機以上に公園や広場に設けられた水道に大変にお世話になった。富士周辺は元来水がきれいなところであるが、どこでも飲み水が得られるありがたさを、歩き旅のつど感じている。

大相撲9月場所でモンゴルで初の遊牧民出身の新鋭逸ノ城は千秋楽まで優勝争いに加わり、殊勲賞と敢闘賞を受賞して一躍ヒーローに躍り出た。あるインタビューで「日本に来て一番驚いたことは?」との質問に対して逸ノ城は、子供のころ水汲みで苦労したことを思い出しながら「どこでも水が出ること」と答えていた。(14.10.06 追加)


安価に自然と静かさを満喫

接近中の台風11号の行方を気にしつつの旅であったが、幸い概ね天候には恵まれ快適な歩き旅を行うことができた。東京をはじめ日本各地は35℃以上の炎暑だったそうだが、日中の暑いときでも27〜28℃という別世界の涼しさだった。


そうした中、山中湖の村営キャンプ場では家族連れのキャンパーに交じって、私より年配の老夫婦がキャンプを張っていた。1週間ぐらいを過ごすそうで、多少の不便はあろうが、ホテルに宿泊するよりも安価に大自然を楽しむことができるので、避暑の方法として素晴らしいと思った。


歩く人に配慮した道路を!

国道・県道を歩くといつも感じるのだが、歩道の整備がとても貧弱だ。道路建設は専ら車が対象で、歩行者のことは全く考えられていない。歩道がなかったり、いつの間にか道路の反対側に移っていたり、兎に角歩きにくい。


富士山が世界文化遺産に認定された。今回の歩き旅でも外国人を含めた多くの人がサイクリングしている姿があった。単に富士山に登るだけではなく、富士山周遊の歩行路と適宜の休憩所を整備することによって、観光に加えて健康に関心のある人を誘致することも、周辺の町の活性化に役立つと思うのだが。


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