人生の余り道  (時の足跡)

ふたりの女王メアリーとエリザベス

◆スタッフ

監 督 : ジョージー・ルーク

キャスト : シアーシャ・ローナン : メアリー女王

   マーゴット・ロビー   : エリザベス女王

◆あらすじ
ふたりの女王

16世紀のイギリスでは、北部のスコットランド王国と南部のイングランド王国が並立していた。イングランドの王位継承権を持つ者としてスコットランドに生まれたメアリーは、早世した父を継いで幼くしてスコットランド女王となった。ところが、命を狙われたことから5歳で渡仏、16歳でフランス王妃となり、18歳で未亡人となってスコットランドに帰国して再び王位についた。


メアリー不在間のスコットランドは、イングランド女王エリザベス一世の支配下にあり、プロテスタント教徒たちが勢力を拡大していた。そのため、突然帰国したカトリックの女王を快く思わない諸侯が多く、衝突したメアリーはプロテスタント長老派の有力指導者を追放した。


一方、複雑な生い立ちを経て即位したエリザベスは、結婚や出産によって混乱が起きることを避けるため、生涯独身を貫く決心をしていた。そんな折、イングランド継承権のあるメアリーの帰国を知って、メアリーに自分の寵臣との結婚を勧めて懐柔を試みたが、メアリーはそれを断り同じスコットランド王の縁者・ダーンリー卿を選んだ。


ところが、結婚直後にダーンリー卿の男色が発覚したため、誇り高いメアリーは激怒した。冷めきった関係ながらも、二人は息子・ジェームズを授かった。しかし、プロテスタント教徒はメアリーに激しく反発したため、スコットランド国内の情勢はさらに混沌とした。


メアリーに脅威を感じるエリザベスは、重臣の進言でスコットランドに侵攻したが失敗した。国家の存立を優先するエリザベスとイングランド統一を実現しようとするメアリーは、同世代に生きる強き女性として互いに競争心を抱きながらも、遠縁の姉妹として心では親しみを抱きはじめる。


メアリーは、王位を狙う有力者たちの思惑によって、陰謀の渦に巻き込まれていった。ダーンリー卿との不仲、秘書官の惨殺、ダーンリー卿暗殺と強制的な再婚、そして遂には義兄の裏切りによってスコットランドを追われる身になり、エリザベスに保護を求めた。


極秘裏に会った二人は、お互いに心では慈しみを感じつつも最後にはメアリーの孤高のプライドがエリザベスの怒りを呼んだ。メアリーは、エリザベスに愛する我が子・ジェームスの後見を頼んで幽閉され、20年後にエリザベスの命で斬首された。


◆感 想

中世のスコットランドの歴史について数行のテロップが画面に流れて説明されるが、ヨーロッパ史に疎い者が理解するにはとても難しい作品だった。

・中世のイギリスはイングランドとスコットランドが併存し、しかも一方の王家が両方の国の王を兼ねるなど複雑な関係にあった。

・プロテスタントとカソリックという宗教上の争いは、日本人には馴染みがない。

・画面が何の予兆もなく両国の宮廷場面が代わったり、突然に回想場面が挿入されたりしたため、ストーリーに追いつけなかった。

・馴染みのない男性俳優が多数登場、しかも、全員が髭面なため誰がどうなっているのかわかり難かった。


気さくで市井の人々にも人気のあったメアリーに対し、宮殿からほとんど出なかったエリザベス、美しく才気あふれるメアリーに対し天然痘の痕を隠すためかつらをかぶり厚塗りしたエリザベス、恋もし結婚もしたメアリーに対し女を捨てたエリザベスなど、権力と野心を持つ二人の女性を対比しつつ、男性社会の裏切り、反乱、陰謀の中で懸命に生きる孤高の姿が描かれている。


エリザベス女王は歴史上輝かしい名声を残したが、メアリーは歴史的には隠れた存在になってしまった。しかし、その子ジェームスによって現在の連合王国(The United Kingdom)の基礎を築くことができた。メアリーはエリザベスの命で処刑されるのだが、断頭台で外被を剥がされたメアリーが内にまとっていた真っ赤なドレスは、メアリーの「未来の勝利」を暗示するようで印象的だった。


エリザベス二世、サッチャー首相、そして現在のメイ首相など、イギリスの傑出した女性指導者の一人としてエリザベス一世の名前を知る程度だったが、本映画が難解であったことから、鑑賞後にWikipediaで中世の英国史やメアリー、エリザベス、ジェームス一世などを調べることで、とても勉強になった。


2019.03.25観賞

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