人生の余り道  (時の足跡)

関ヶ原

スタッフ

監督・脚本 : 原田眞人

キャスト : 岡田准一  :  石田三成

   役所広司  :  徳川家康

   平岳 大  :  島左近

   東出昌大  :  小早川秀秋

   有村架純  :  初芽

あらすじ

関ヶ原

秀吉に認められて大名に取り立てられた石田三成は、自分の石高の半分をもって、猛将として名を馳せた島左近を家臣として招いた。秀吉を嫌う左近であったが、「義」に感銘した左近は三成に仕えることを決めた。伊賀の忍び・初芽も、"犬"として三成に仕えることになった。


秀吉が病床に臥すと、天下取りの野望を抱く徳川家康は、北政所に近づくとともに秀吉の不興を買う小早川秀秋や秀吉恩顧の武将たちを味方につけようと、言葉巧みに懐柔していく。秀吉逝去の翌年に大老・前田利家も亡くなると、先の朝鮮出兵時から三成に恨みを持つ福島正則、加藤清正ら秀吉子飼いの七人党が、三成を襲撃する。三成は家康の屋敷に駆け込み難を逃れるが、このことで佐和山城に蟄居させられる。


上杉家家老・直江兼続は、三成と結んで家康を挟み撃ちするため領国で戦備を調える。家康が上杉討伐に向かうと三成は、大谷刑部らを引き込み、毛利輝元を総大将に立てて挙兵した。三成の西軍、家康の東軍が、覇権をかけて動き出す。決戦の地は関ヶ原。


先んじて関ヶ原に到着した西軍は関ヶ原の高所の大半を抑え有利な態勢を築いた。しかし、家康は西軍の多くの武将を内応させていた。開戦当初、地の利を得て優勢に運んだ三成は、まだ参戦しない武将に戦いに加わるよう督促したが、小早川秀秋の裏切りに会い総崩れとなった。三成は戦場を落ちたが捕らわれ、三条河原で首をはねられた。

感 想

司馬遼太郎のベストセラー「関ヶ原」(原作未読)を映画化したもので、ストーリーは説明までもないが、映画の感想を一言でいえば、とても印象に残る素晴らしい作品に仕上がっている。本作品では、従来の定説にとどまらず監督独特の仮説が組み込まれていて、三成も家康もとても生き生きと描かれ、歴史に関心ある人にとっては楽しめる映画だ。


歴史は活字と要図で知識を得るので、関ケ原の戦いも三成と家康が鳥観図を見ているように全体を把握して統制ある戦いをしているように思いがちであるが、実際の関ヶ原は東西20万の大軍が展開するほどの広さはない。特に西軍は各部隊が個別に高所に陣を構えているので、連携のない小部隊の戦いが実相、それがCGを用いることなくリアルに描かれている。


残念なのは、主人公・三成がとても早口で内容を把握するのが難しかった。登場人物も多く馴染みのない俳優だと何の役柄だかわからず、本であれば読み返して確認できるが映画では置いてきぼりになってしまう。この分量の物語を2時間半の上映時間ではやむを得ないが----。方言の多用はリアリティがあって良かった。しかし、島津軍の鹿児島弁は、鹿児島勤務の経験がある私には理解できたが、多くの人には難しかったかもしれない。


いくつかの定説にない解釈が組み込まれていた。尾張という田舎出身の北政所は、先進地域である近江出身の淀君と三成に対して劣等感を持ち、それが加藤清正ら秀吉子飼いの武将を家康に走らせる原因になったこと、裏切り者・小早川秀秋が本作品では実は三成の「義」を理解していたとされているなどは、面白い設定だと思う。


情報収集はいつの場合でも重要。通信手段が発達していないこの時代は多くの忍者集団が存在し、例えば本能寺の変で家康が京都を脱出する伊賀越えで忍者集団に助けられたように、忍者が敵情偵察などに活躍した。初芽(有村架純)のような美しい女忍者がいたかどうかは別として、本作品で三成も家康も忍者集団を利用した様子が描かれていて面白かった。


2017.09.03観賞

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