人生の余り道  (時の足跡)

バーニング・オーシャン

スタッフ

監  督 : ピーター・バーグ

キャスト : マーク・ウォールバーグ:マイク・ウィリアムズ

   カート・ラッセル:ジミー・ハレル

   ジョン・マルコビッチ:ヴィドリン

あらすじ

バーニング・オーシャン

2010年4月20日、電気技師のマイク・ウィリアムズは妻と娘に送られて、他の仲間と共にメキシコ湾沖約80キロにある石油掘削施設"ディープウォーター・ホライズン"へ3週間の勤務に向かった。


施設主任のジミー・ハレルは、安全施策の実施状況を確認したが、放置されたままの問題が山積みだった。電気系統の故障だけでなく、工期の遅れを挽回しようとするBP社の管理職社員ヴィドリンが、安全確認のための必要なテストを行っていなかった。ジミーが抗議をするも、独自の理論を振りかざして安全テストをせずに泥水の除去作業を強行した。


その夜、泥水の噴出と共に海底油田から逆流した天然ガスが引火して大爆発が起こった。施設も海面も火の海と化す最悪な状況の中、閉じ込められた作業員たちは被害の拡大を食い止めるべく奮闘したが、燃え盛る炎と弾け飛ぶ破片のため遂に救命艇で付近にいた汚泥回収船に脱出した。126名の作業員たちは11名が死亡、17人が負傷した。


感 想

7年ほど前のことだからまだ記憶に新しい、メキシコ湾で実際に起きた大事故の映画化である。本作品はマイクたちが勤務に就く4月20日の朝から、脱出してヘリで病院に運ばれるまでの2日間の出来事をドキュメンタリー・タッチで描いた災害サスペンス映画である。


当時、海底から噴出される原油をどのように止めるのか固唾を呑んでニュースを見ていたが、本作品では、火炎と爆発の事故現場を実に迫力のある映像で描いているが、その後の事故対応や海洋汚染などは描かれていない。世界中に大きな衝撃を与えた事故だけに、全容を知りたいと思う者にはやや物足りない。


しかし、海底油田の掘削施設の遠景はよく映像などで目にするが、施設の実情がこの作品でよくわかってよかった。施設は、水深1,500メートルの海上に浮いて自動で位置を調節しつつ、約5,500メートルのパイプを海底に伸ばしている。この事故では、逆流してきた天然ガスが引火爆発して位置調節装置が壊れたため、パイプが切断してしまった。


石油掘削事故発生時に海底で噴出する原油を止めることができる技術者チームは、事故の規模にもよるが極めて少ないと言われている。それだけにこれほど大きな事故では、どんな方法で止めるのか関心があったが、その点に触れられていないのが残念だった。


BP社によると、噴出が止められた7月16日までの原油流出量は約78万キロリットルであり、湾岸戦争時の約100万キロリットルに次ぐ規模で、被害額は約400億ドルとされるが、未だに係争中の裁判がある。また、1989年にアラスカ州で座礁船から4万キロリットルが流出したが、約20年経って漸く漁が元に戻ったという。メキシコ湾は漁業が盛んで、エビや牡蠣が良く取れたが、いつまで影響が残るのか。


BP社は、もとは「ブリティッシュ・ペトローリアム」といい英国の企業であったが、多国籍化したため単にBP社と称するようになったという。日本の企業も10%の権益を持っていたため、この事故では応分の補償金を負担している。


2017.05.04観賞

inserted by FC2 system