人生の余り道  (時の足跡)

グレートウォール

スタッフ

監  督 : チャン・イーモウ

キャスト : マット・デイモン:ウィリアム・ガリン

   ジン・ティエン:リン・メイ司令官

   ペドロ・パスカル:ペロ・トバール

   ウィレム・デフォー:バラード

あらすじ

グレートウォール

11世紀初頭、火薬を求めて万里の長城付近に辿り着いたウィリアムとペロは、馬賊に襲撃されたうえ謎の獣に襲われたため、禁軍が守る万里の長城に逃げ込んだ。直後に攻め寄せた怪物集団の饕餮(とうてつ)に苦戦する禁軍、その戦いに加勢したウィリアム達は活躍が認められて、仲間に加えられた。


禁軍の使命は、60年毎に襲来する饕餮から首都を守ることだった。総勢10万の戦士が5つの部隊に分かれて最先端の装備を駆使して長城の守りに就いている。その一つにリン隊長が率いる女性部隊があった。


一方、城内には火薬を求めて十数年前に潜入した西欧人のバラードが禁軍に協力しつつ、その時を窺っていた。バラードは、饕餮の襲撃をチャンスと捉えペロに火薬を奪って逃げようと持ち掛けた。一方ウィリアムは、圧倒的な敵を前に団結して戦うリン隊長の姿に惹かれて、共に戦う決心をする。


饕餮の軍団は、女王を核心に専門化した怪物群に分かれて統制ある攻撃を仕掛けてきた。5色の鎧をまとった禁軍はそれぞれが専門技を駆使して饕餮に立ち向かい、壮絶な戦闘が繰り広げられる。遂に首都に侵入を許した禁軍であるが、リン隊長とウィリアムの活躍で漸く饕餮を破り、首都を守ることに成功した。


感 想

2008年の北京オリンピックで開幕式を演出した中国を代表するチャン・イーモウ監督がハリウッドに進出して、「ジェイソン・ボーン」シリーズのマット・デイモンを主演に迎え、万里の長城を舞台に繰り広げられる壮絶な戦いを描いた中国・アメリカ合作のアクション映画である。


本作品のテーマは「信頼」である。それは、金儲けのためだけに生きてきたウィリアムが、禁軍の戦士たちが命を犠牲にして戦う姿に大義を感じ、リン隊長の「仲間への信頼に応えるため」との言葉で、自分の人生観を大きく変えて禁軍に味方したことに表されている。


「中国の映画事情(1)、(2)」でも書いたが、いまや日本をはるかに凌ぐ興行マーケットを誇る中国、しかも外国映画を輸入制限しているので、ハリウッドが中国に受け入れられやすい映画を製作することは当然の流れである。イーモウ監督は、本作品で「信頼」をテーマにして国民の啓蒙を図ることで、輸入枠が得られやすい作品にしているのだろうと思った。


画面がとてもきれいだった。長城を守る精鋭部隊は専門ごとに赤青黄とカラフルに色分けされ、正に北京オリンピックの開会式でイーモウ監督が見せた祭典を思い出させた。しかもリン隊長率いる青い鎧の美女軍団は、長城の壁から飛び出すバンジージャンプさながらの戦法で怪物と戦う姿は奇抜でダイナミックだ。


弓の名手ウィリアムがその技を披露する画面では、空中に投げた椀を弓手に持った3本の矢を目にも止まらぬ速さで放ち、柱に固定させた。"編集?"とさえ感じたが、実は、弓馬術の世界記録保持者ラヨシュ・カッシャイ氏(※)から伝授された業だという。ジャンルは全く異なるが、"吹矢に夢中"の私にとってとても良い刺激を受けた。※You Tubeで弓の映像が見られる。


3Dで見たがこれは正解だった。万里の長城や迫力満点の大規模な戦闘場面が、ドローンによる上空からの画面をまじえて所狭しと写し出され、大いに楽しめた。しかし、脚本はシンプルで、エイリアンもどきの怪物を退治する話であり、特に最後があっけなく結末がついてしまったのでストーリー展開は期待しないほうが良い。


2017.04.23観賞

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